【重要】新型コロナオミクロン株の流行と子ども達へのワクチン接種について

新型コロナオミクロン株の流行と子ども達へのワクチン接種について

                      あすなろ会 顧問 武井修治

2020年から始まった新型コロナウイルス感染のパンデミック状況に対し、新規治療薬やワクチン開発が進められてきました。しかし、現状は変異株の出現スピードに追い付けていない状況ですし、また社会経済への影響もあって、日本でも次第にzeroコロナからwithコロナへと舵を切りつつあるように思われます。また、ワクチンを危険なものと考え、子どもへの接種に反対する人もおられますし、感染しても重症化しない(健康な)子どもたちへのワクチン接種は必要か?と考える小児科医もおられます。


このような状況で、私たちは、JIAという基礎疾患を持つ子ども達をどう守っていけば良いのでしょう。


この稿では、パンデミック第7波となりつつあるオミクロン株による新型コロナ感染症と、従来株(α株)に対して開発された現在のワクチンの有効性や安全性について、日本小児科学会の予防接種・感染症対策委員会が発表(2022年3月28日)した「5~11歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」を軸に、他の最新情報を加えて紹介します。敢えて私見は挟まず、報告されている事実のみお伝えしますので、子どもさんをどうやって新型コロナから守るか、それぞれのご家庭でお考えいただく資料としてご利用ください。

○オミクロン株の特徴

・現在流行しているのは、ほぼ100%オミクロン株。
・3月になり、最初に報告されたオミクロン株(BA.1株)の変異株(BA.2株)が増えてきた
 東京では17.8%(3.1-3.7) が1週後に 38.5%(3.8-3.14)と急増。鹿児島でも現在39.1%
・オミクロン変異株(BA.2株)の特徴
感染力が最初のBA.1株より強い(感染者1人が感染させる人数が18~26% up)
  潜伏期間(感染してから発症するまでの時間)半日ほど短縮
  重症化や入院率は、最初の株(BA.1株)と同等

○小児のオミクロン株感染例の特徴

・感染力が強く潜伏期間も短いため、こどもの感染例が増加
小児人口に対する感染率:10歳未満6.7%, 10歳代6.3% (2022年3月8日現在)
資料:厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の国内発生動向:
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000910933.pdf


・従来株(α型、Δ型)と比べて発熱の頻度が高く、熱性けいれんの報告例が多い。
またのどの痛みが強く、味覚・嗅覚障害は少ない。

資料:日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会.「データベースを用いた国内発症小児Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) 症例の臨床経過に関する検討」の中間報告: 第3報オミクロン株流行に伴う小児COVID−19症例の臨床症状・重症度の変化:
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=385

・肺炎、けいれん、嘔吐・脱水、クループ(喉頭炎による呼吸障害)などの中~重症例が増加
資料:日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会.「データベースを用いた国内発症小児Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) 症例の臨床経過に関する検討」の中間報告: 第3報オミクロン株流行に伴う小児COVID−19症例の臨床症状・重症度の変化:
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=385

・子どもの死亡例はゼロであったが、2月に基礎疾患を持つ9歳児の死亡例が発生。

・0~1歳と基礎疾患のある小児患者で、重症化するリスクが高い。
資料:令和2年度厚生労働行政推進調査事業費補助金新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業・一類感染症等の患者発生時に備えた臨床的対応に関する研究(研究代表者加藤康幸)診療の手引き検討委員会:新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き第6.0版

○ワクチン情報

1)5-11歳向けに承認されたワクチンは、ファイザー社製のみ(RNA量は1/3)

2)オミクロン株に変わってからの成績
・感染予防効果31%、発症予防効果51%、入院予防効果は74%

資料:①Fowlkes AL, et al. Effectiveness of 2-Dose BNT162b2 (Pfizer BioNTech) mRNA Vaccine in Preventing SARS-CoV-2 Infection Among Children Aged 5–11 Years and Adolescents Aged 12–15 Years —PROTECT Cohort, July 2021–February 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. ePub: 11 March 2022. ②Klein NP, et al. Effectiveness of COVID-19 Pfizer-BioNTech BNT162b2 mRNA Vaccination in Preventing COVID-19-Associated Emergency Department and Urgent Care Encounters and Hospitalizations Among Nonimmunocompromised Children and Adolescents Aged 5-17 Years -VISION Network, 10 States, April 2021-January 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022; 71(9):352-358.
・BA.1株とBA.2株に対する発症予防効果はほぼ同等 (BA.1株vs BA.2株)
2回接種後:25週以降 10% vs 18%
3回接種後:2-4週69% vs 74%、5-9週61% vs 67%、10週以降49% vs 46%

3)安全性
・小児(5-11歳)42,504人の調査(v-safe調査):
局所(注射部位)反応57.5%、全身反応40.9%→発熱7.9%(1回目)、13.4%(2回目)
・安全性監視システム(VAERS)に報告された副反応4,249件の内容:
  非重篤4,149例(97.6%)、重篤100例(2.4%)→発熱(29例)、心筋炎(11例)→全員回復
・5-11歳の小児の副反応の出現頻度は、16-25歳と比べて低い。

資料:①Hause AM, et al. COVID-19 Vaccine Safety in Children Aged 5–11 Years —United States, November 3–December 19, 2021.MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021; 70(5152):1755-1760. ②Woodworth KR, et al.: The Advisory Committee on Immunization Practices’ Interim Recommendation for Use of Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine in Children Aged 5–11 Years —United States, November 2021.MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021; 70(45):1579-1583.

○JIAの子ども達を新型コロナウイルス(オミクロン株)からどう守るか?

1. 日常生活での予防対策(マスク、手洗い、social distance、会食、etc)の徹底と継続

2. 周囲の大人(家族、学校や幼保育園スタッフ)のワクチン接種

3. JIAの子どもへのワクチン接種
メリット(重症化を防ぐ)とデメリット(副反応)を良く理解する。そのバランスは、本人の体調や疾患活動性、治療内容とも関連するので、主治医と相談して決定する。
資料:http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=409

4. 周囲の子ども達(きょうだいを含む)へのワクチン接種
前述した通り、(健康な)子ども達へのワクチン接種については、いろいろな意見がある。そのため、日本小児科学会はリスク・ベネフィットを勘案した接種を推奨しているものの、接種を必須としている訳ではない。

5. 学校や幼保育園と家庭との連携
オミクロン株は感染力が強く、潜伏期間も短く、しかも感染しても無症状の子どもが多いため、学校や幼保育園で感染拡大を防ぐ取り組みは難しい。しかし、学校や園に対して子どもさんが基礎疾患(JIA)を持つことを説明し、感染者発生の情報を伝えるhot lineを準備しておけば、速やかにPCR検査を行うことで感染の有無を確認することができる。きょうだいの通う学校や幼保育園にも、同様な対応を依頼する。